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石山アンジュさんが考える、日常に根づく「ギフト」の役割と選び方のサムネイル

石山アンジュさんが考える、日常に根づく「ギフト」の役割と選び方

拡張家族という概念を提唱する石山アンジュさんに、これからの家族のあり方や二拠点生活を通じて感じたギフトの役割、選び方などについて、お話を伺いました。

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CHOOSEBASE編集部
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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
石山アンジュさんが考える、日常に根づく「ギフト」の役割と選び方のサムネイル

3月にスタートした新たな編集テーマ「gift your color / 何色にしよう」。5月は「つながりを祝う」をキーワードに、家族やパートナー、大切な仲間へのギフトを考えています。この記事では、100人以上の仲間と共に家族として暮らすという"拡張家族”を提唱・実践する石山アンジュさんに、これからの家族のあり方や二拠点生活を通じて感じたギフトの役割、選び方などについてお話を伺いました。

ーーまず、石山さんにとっての家族についてお聞かせください。石山さんはシェアハウスコミュニティ「Cift(シフト)」で100人以上の方々と共に家族として暮らしておられます。石山さんにとって家族とはどんな関係性のことを指すのでしょうか。

石山:他者だけれども、相手に起こった出来ごとに対して自分ごとのように心が動いて、喜んだり、悲しんだりできるつながりのことを家族だと思っています。「Cift」では入居時に、家族面談というものがあります。その面談で「家族になりましょう」と合意できた人たちと共に生活をしています。お互いが家族であるという意識を共有して、常にお互いを思いながら共に生活をしています。

ーー一般的なシェアハウスと、家族として暮らす「Cift」では、どのような点が違うのでしょうか。

石山:人間関係の作り方が真逆かなと思います。一般的なシェアハウスでは同じ空間で初めて出会い、時間の経過とともに信頼関係を深めて、仲良くなっていきます。一方の「Cift」では、今まで他人だった人を最初から全面的に信頼し、家族だと捉えるところからスタートします。自分とは価値観が違う人、本来であれば友達になり得なかった人とも家族として暮らしていくことになります。また、友達ではなく家族なので、相手の人生を背負う責任感のようなものはあると思います。

 

ーー現在、石山さんは事実婚をされて、「Cift」と大分という二拠点生活をされています。二拠点生活を始めて、どんな変化がありましたか?

石山:大分に拠点を持って、もう3年目になりますが、私自身にとっても、「Cift」にとっても、これは挑戦だなと感じています。というのも、「Cift」は2017年に始まって、最初はひとつのシェアハウスとして38人から始まったのですが、今は100人を超え、京都にも拠点が増えました。また、私だけではなくて、ほかにも二拠点生活をする人が増えています。そんな中で、だんだん顔と名前が分からなくなっていく、一人ひとりと過ごす時間が減っていくということが起こってきます。それでも家族だと思えるのかということをコミュニティとして挑戦しているフェーズかなと感じています。

ーー大分での生活を通じて家族観はどう変わりましたか?

石山:「Cift」以外の所でも、どんな人であれ相手を家族だと思ってみる視点を持とうという気持ちに変わってきました。「Cift」を超えて、社会に対してそういう姿勢で向き合うことがこれから必要なんじゃないかなと思います。

ーーギフトについてもお聞かせください。石山さんにとって印象的なギフトのエピソードはありますか?

石山:大分の生活の中で、ギフトに対する考え方が少し変わってきました。農家さんに囲まれた集落で暮らしているのですが、毎日何かものを貰うんです。例えば朝採れた椎茸とか、ネギとか、誰かからもらったお菓子とか。常にお裾分けのやりとりがあるんですよね。最初は、何かお返ししないとと思って、地元横浜の中華街のお中元セットを買って渡したりしていたのですが、あまりにも日常的にお裾分けが来るのでだんだん難しくなってきて。途中から私も買ってあった缶ビール6本のうち2本をお返しとしてあげるとか、そういう風になりました。

 

ーーギフトの捉え方が変わったと。

石山:ギフトって、そういうことでもいいんだなってことに気づきました。誕生日だからとか、記念日だからと特別に何かを贈らなきゃいけないと考えがちですが、そうじゃないんだなと。何かを贈り合うという行為自体が、つながりや信頼を生んでくれるもので、それがギフトだと思います。

そんなふうにギフトの贈り合いを繰り返していると、モノもお金もすべて循環しているなと気づくんです。シェアリングの概念にも近いんです。その循環に気づくと共生意識が生まれて、その地域で暮らすことの安心感や信頼感を感じることができる。それはとても豊かな体験だと思います。

ーー拠点生活を始めて家族と離れるタイミングも増えたかと思いますが、石山さんから離れた家族や仲間に贈ったギフトはありますか?

石山:実は去年、お米を作り始めて、そのお米をギフトにしました。ものすごく喜んでくれて、私も嬉しかったです。自分が自然の中で作ったお米を自分の大切な人たちが食べてくれる。なんだか自然と人の境界線のないつながりを感じました。

ーーでは最後に、石山さんが考える、ギフトの選び方のポイントを教えてください。

石山:私がギフトを選ぶときは、相手との会話を思い出しながら、その人に合いそうだなと思うものを選びます。あげるものは必ずしも新品じゃなくてもいいし、買ったものじゃなくてもいいと思います。例えば自分の本棚にある本をあげるとか、クローゼットにある洋服をあげるとか、そういうものでもいいんじゃないかなと思います。

ほかにも、お米もそうですが、自分で作ったものをあげることも多いです。子どもが生まれた人がいたらオムツケーキを手作りで作ってあげたり、ご飯が好きな人にはものすごく手の込んだチャーシューを作ってあげたり。あとは、私はホームパーティが好きなので、ホームパーティーを主催して開いたり。新品の高いものではなくても立派なギフトになると思うんです。小さなものでも贈り合いの積み重ねが大事なんじゃないかなと思っています。

 

1989年生まれ。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。2018年10月ミレニアル世代のシンクタンク一般社団法人Public Meets Innovationを設立。 新しい家族の形「拡張家族」を掲げるコミュニティ一般社団法人Cift代表理事。世界経済フォーラム Global Future Council Japan メンバー。ほかに「羽鳥慎一モーニングショー」木曜レギュラー、「真相報道バンキシャ!」「アサデス!」「報道ランナー」にコメンテーターとして定期出演。著書に『シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)』がある。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師。大分と東京の二拠点生活。

Text:
Natsu Shirotori
Photo:
ご本人ご提供
Edit:
Takahiro Sumita
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