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ゼロ・ウェイストに取り組む徳島県・上勝町でこれからの暮らしを考える vol.3 多彩な領域で上勝町内外をつなぐ次世代の5人のサムネイル

ゼロ・ウェイストに取り組む徳島県・上勝町でこれからの暮らしを考える vol.3 多彩な領域で上勝町内外をつなぐ次世代の5人

ゴミのない社会を目指す徳島県・上勝町で生きる次世代たちから学ぶ、私たちがサステナブルな生活のためにできること。

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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
ゼロ・ウェイストに取り組む徳島県・上勝町でこれからの暮らしを考える vol.3 多彩な領域で上勝町内外をつなぐ次世代の5人のサムネイル

地球環境はもう後戻りできないところまできていると聞きますが、私たちは日々の生活で何を考えて、暮らせばいいのでしょうか。そのヒントを得るため、ゴミのない社会(ゼロ・ウェイスト)を目指すことで知られる徳島県・上勝町を訪れました。

上勝町は町全体で「ゼロ・ウェイスト」を目指した取り組みをしているだけでなく、高齢化が進み町の存続自体が危ぶまれる中で若者の移住も増え始めているといいます。上勝町で生きる次の世代の方々は地球や町の“TIMELIMIT”にどう向き合っているのか。現地で出会った次世代たちを連載形式で紹介します。

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※Vol.2はこちら

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最終回となる第3回は、上勝町を拠点にさまざまな活動を通して町の内と外をつなぐ取り組みをしている5人に焦点を当て、上勝町との出会い、現在取り組んでいる活動、“TIMELIMIT”についての想いや今後の取り組みについて、話をうかがいました。

RISE & WIN Brewing Co. ストアマネージャー 池添亜希さん

 

-上勝町との出会いとRISE & WIN Brewing Co.で働くことになった経緯を教えてください。

池添:私は、出身が三重で、結婚してから徳島に来て最初は徳島市内に住んでいたのですが、3年前にこのお店で働き始めたのをきっかけに家族で移住しました。元々福祉の業界で介護の仕事を8年やっていたのですが、その間に子どもを授かったり、父親を看取ったりということを経験して、いつか0歳の子どもから100歳の高齢者までが一緒に集えるような施設をつくりたいと考えていました。

夫が、上勝ビールの営業を担当していた関係でRISE & WINについては、プロジェクトの立ち上げ時から話を聞いていて、ある時オーナーの田中(田中達也 株式会社スペック 代表取締役社長)と話をする機会がありました。その時に、いつか施設をつくりたいという自分の夢の話をしたら「よかったら、一緒に働いてみない?このお店には全国から色々なお客さまが来るから、きっと仲間が見つかると思うよ」と誘っていただきました。

半年くらいすると、だんだんこの町自体が面白いと思うようになって、自然豊かで、人が温かいこの町で子育てがしたいと思って移住しました。今はお店から数分のところに住んでいて、息子たちは、この町の小学校と幼稚園に通ってすくすくと育っています。

-RISE & WIN Brewing Co.の取り組みについて教えてください。

池添:RISE & WINは、徳島市内にある食品衛生や検査の事業をしている株式会社スペックが運営しています。10年ほど前に上勝町前町長の笠松さん(笠松和市)からお声がけをいただいて、代表の田中が上勝町を視察にいったのですが、ゴミステーションを見た時に感動して、ぜひこのゼロ・ウェイストの取り組みを外に発信していきたいと考えました。

その後、この町に必要なものってなんだろうかと考えた時に田中が思いついたのがマイクロブルワリーでした。田中が視察に行ったアメリカのポートランドには、町の中にマイクロブルワリーがたくさんあって、みんながビールを片手に語り合っている光景を見た時に「これだ」と思ったそうです。

ポートランドでは、グラウラーボトルというものがあって、お気に入りのブルワリーに行って、その日飲む分を好きなだけ量り売りで購入するという文化があって、それを知った時に、これもゼロ・ウェイストの取り組みになるしかっこいいと思い、ビールを始めることになりました。前身の上勝百貨店では、真面目にゼロ・ウェイストを押し過ぎてしまったというのが反省点でした。いくら、環境によくても人の心に届かなければ意味がない。そんな経緯から「楽しくゼロ・ウェイスト」をコンセプトにしたRISE & WINが誕生しました。

 

RISE & WINではオリジナルのクラフトビールをつくっていて、廃棄される予定の農作物などを副原料として使用していて、私たちは、ゼロ・ウェイストビールと呼んでいます。例えば、代表的な商品の一つカミカツホワイト(KAMIKATZ WHITE)では、上勝町の特産品である柚香を搾った後に通常は捨てられてしまう皮を再利用してつくっています。「ジャストドリンク、ジャストビア(JUST DRINK、JUST BEER)」。ただただビールを楽しんで飲んでほしいということで。みんなが美味しいってビールを飲んでくれたら本来捨てられるはずだった廃棄対象のものが助かるという仕組みです。

通常のレギュラービールが5~6種類程度。その他、季節に合わせた限定メニューや、県外のさまざまな企業とコラボレーションしたスペシャルメニューを展開しています。最近では、ゼロウェイストの取り組みに参加したいという企業から「捨てるのがもったいないから何かに変えられないでしょうか?」というご相談をいただくこともあって、廃棄される予定だった原料を活かした新しいビールの開発などにも取り組んでいます。

MORNING SAUNNER

BARREL AGED BEER

お店には、屋内のカフェスペースのほかに、屋外バーベキュースペースや、宿泊ができるグランピング施設なども併設しています。お店の間口を広げることによって、さまざまな人たちが気軽に立ち寄ることができる空間を目指しています。だから、私たちはゼロ・ウェイストを押し付けるのではなくて、5分滞在の人も、1時間滞在の人も、みんながそれぞれの目的に沿って楽しんでもらって、ご自身のタイミングでゼロ・ウェイストに触れてもらえるきっかけをつくれたらいいなと思っています。

テラスにはグランピングスペースがある

 -今後の取り組みについて教えてください。

池添:少し離れたところにKAMIKATZ STONEWALL HILLという私たちのビール工場があるのですが、そこでは今、循環農業事業に取り組んでいます。ビールをつくる時に、モルトかすなどが出て、今までは上勝の農家さんに引き取ってもらい、堆肥化していたのですが、それを液肥(液体肥料)にして畑にまいて土づくりをして、その畑でまたムギを育て、ビールをつくるという循環を実現しようという試みです。今は、無事に液肥が完成して、運用を始めている段階です。液肥の中にはアミノ酸や乳酸菌が豊富に含まれているので、うまくいけば植物にもいいものがつくれるかもしれないということで可能性を感じています。昨年の11月下旬には麦の種まきも済み、芽が出ました。今年5月には収穫予定です。

 

株式会社スペックのコンセプトは「クラフト&サイエンス」なのですが、職人技である美味しいビールづくりと、科学的なエビデンスに基づいた商品開発の両方に挑戦していこうという思いが込められています。そうやって循環させてつくったムギを原料にしたビールをつくることができたら、手にとってもらった人にゼロ・ウェイストについて考えるきっかけを届けられるのではないかと考えています。

代表は「我々はただビールを売る会社じゃない。バックボーンには上勝町のゼロウェイストの文化がある。その中で私たちはクラフトビールでメッセージを発信していく」とよく話していて、これからもこのお店やビールを通して、上勝町のことを発信していきたいと思っています。

イギリスの建築家集団アセンブルが上勝町にインスピレーションを受けてつくったテイスティングルーム

②INOW 渡戸香奈さん、リンダ・ディンさん

左:渡戸香奈さん 右: リンダ・ディンさん

-お2人の上勝町との出会いについて教えてください。

リンダ:私は最初にカナダから旅行で上勝町に来たのですが、すごく景色が綺麗で、こんな場所に住んでみたいと思って移住しました。

渡戸:私は母が日本人で、父がカナダ人のハーフなのですが、5年くらい前にインターネットの記事で上勝町のことを知りました。今では、日本のメディアでもゼロ・ウェイストの取り組みが有名になっていますが、当時は、英語で調べた方がたくさん情報が出て来るような状況だったんです。だから、外国の人でも、上勝町のことを知っている人は意外と多いんですよ。

-INOWの取り組みについて教えてください。

リンダ:私たちみたいに外国にいて、上勝町でゼロ・ウェイストの勉強をしたいという人はたくさんいるのですが、日本語が分からないと生活に困ってしまいます。そんな人たちを受け入れるために、ホームステイプログラムのINOWを立ち上げました。ゼロ・ウェイストを学ぶためには、自分自身の経験が重要です。上勝町の45分別の取り組みについてもゴミステーションを見学するだけじゃ分からない、毎日、自分がゴミを捨ててみてはじめて理解できることがあると思います。

渡戸:もちろん見学に来ることや旅行に来ることで得られる学びもたくさんあると思うのですが、もうちょっと長い間滞在したら、地域の人たちとつながることもできて、それまで見えなかったものが見えてきたり、滞在しながら地域の人たちと交流して、農業体験やゴミの分別体験ができるステイプランを提案しています。

INOW: Your Home in Kamikatsu

私たちは、RDND(アール・デ・ナイデ)という会社に所属しているのですが、代表の東輝実と一緒に1年半前からINOWをスタートしました。RDNDではINOWのほかに、上勝町のショールームをコンセプトにしたカフェCafe polestar(ポールスター)を運営していて、私たちもお手伝いをしています。

リンダ:コロナ禍の中で、取り組みをスタートしたので、まだ海外からの人の受け入れはできないのですが、日本に住んでいる外国人を中心に受け入れを進めてきました。昨年の夏は予約が埋まっていたのですが、緊急事態宣言が出た影響で、キャンセルがたくさん出てしまって。ちょっと時間ができてどうしようかと考えていた時に、自分たちの商品をつくってみたいと思い、晩茶づくりをはじめることにしました。

渡戸:自分たちの手で何かをつくる経験をしてみたかったんです。私たちはINOWのプログラムを通して、自分たちで何かをつくることの大切さを伝えていますが、改めて自分たちもそれを体験してみたいなって。晩茶は上勝町の名産品なのですが、これだと地元の人のお手伝いをしながら、いろいろ教えてもらうこともできると思いやってみようと考えました。

リンダ:毎年、晩茶農家のお手伝いで茶摘みをやっていたのですが、農家はみんなご年配の方々ばかりで、新しく始める人がいないのが課題になっていました。

渡戸:次の世代にバトンタッチする機会がなかなかなくて、だったらまずは、私たちがやってみようということで始めました。今では、町の中で、一番若い晩茶のつくり手だと思います(笑)。

勝阿波晩茶 ティーバッグ Two Ladies Kamikatsu Awa Bancha Tea Bags

リンダ:お茶づくりの経験がすごく楽しかったので、多くの人たちにこの体験をしてほしいと思い、

お茶の入れ物の中に茶摘みを体験できるチケットを入れる予定です。お茶を買ってくれた人が、今年の夏に上勝に来て一緒に茶摘みができたらいいなと考えています。

渡戸:ただ商品を買うだけでは体験につながらないから、せっかくなら、体験も含めて販売できたら面白いのではないかと思いました。

-今回のテーマ“TIMELIMIT”についてお2人の考えを教えてください。

リンダ:地元の人の話では、5年後には、町の色々なところで農家の跡取りがいなくなると言われています。このまま新しく若い農家も現れなければ、上勝町の野菜は穫れなくなってしまう。そんな、上勝町のタイムリミットを一番強く感じています。高齢化や過疎化で毎年、町人が減っていく中で、どうやって移住者を増やしていくかを考えないといけません。どうやって、移住のきっかけをつくるか、この町に来てくださいというメッセージを発信していくかをこれからも考えていきたいと思っています。

渡戸:私は、タイムリミットと聞くと、追いつめられるようなイメージがあるのですが、どうしたらもうちょっといい世界になるのかポジティブに考えることが大切だと思いました。また、移住については、地元の人との関係もすごく大事なので、町の人の思いを尊重しながら、その中で、どうやったらもっとうまくできるかを考えていかなければなりません。INOWを通して、外の人と地元の人をつなげるきっかけをつくるような取り組みをしていきたいと思います。

③JOCKRIC 黒川勝志さん

 

-上勝町との出会いについて教えてください。

黒川:地元は徳島県の藍住町という所です。元々、実家が縫製業をやっていて父親が一度たたんだ縫製工場を使って、8年ほど前からものづくりを始めました。エプロンや割烹着などの仕事着を中心としたブランドJOCKRICを立ち上げたのですが、ある時RISE & WIN Brewing Co.さんからお声がけをいただいてエプロンを制作することになりました。上勝町のゼロ・ウェイストの理念に沿った、ゴミをださないものづくりをやっていきたいという話で、面白い取り組みだと思い、この町に制作の拠点をつくろうと考えました。今でも、地元の藍住町と上勝町の2拠点で活動をしています。

-上勝町での取り組みについて教えてください。

黒川:主な取り組みは、お店からのオーダーを受けてエプロンをつくったり、古着などの素材を使った割烹着をつくったりしています。割烹着がメインなのですが、HOTEL WHYのプロジェクトでは、カーテンをつくってほしいという依頼をいただいて、建築現場で余ったカーテンの端材を集めて縫い合わせたカーテンをつくりました。基本的には依頼を受けてつくることが多いのですが、個人的な活動として、捨てられたぬいぐるみで新しいぬいぐるみをつくるという取り組みもしています。

この町に来たころ、友人と何か端切れを使って新しいものづくりができないかと考えていて、たまたまゴミステーションのくるくるショップにぬいぐるみがあるのを見てやってみようと思いました。

端切れでぬいぐるみをつくったり、洋服をつくったり、バッグをつくったり、というのはよくあるので、何か別のものづくりをやってみたいという思いがありました。と言っても、うちは布ものしか縫えないので、布を材料にした何かを探している感じです。

持ち帰ったぬいぐるみを解体して、裏返してみると生地の質感や表情が面白かったので、そのままひっくり返して中綿を詰めて、新しいぬいぐるみをつくりました。それからは、定期的に捨てられる予定のぬいぐるみを集めて、つくっています。まわりの友人がちょうど世代的に、子どもがぬいぐるみから離れる年齢だったりするので、捨てるって聞いたら、「それください」って言って集めて来て(笑)。あまり数はつくれないのですが、つくったものはECサイトや、イベントなどにお声がけいただいた際に販売しています。

不要となって捨てられたものをアップサイクルしてつくられたぬいぐるみ

- 今後の取り組みについて教えてください。

黒川:上勝町に来てから、ありがたいことにいろんな所から「こんなものをつくってほしい」というお話をいただきます。ただ、現状では、家族経営でやっているのでつくれるものに限界があります。一方で、縫製工場同士の横のつながりは広がってきたので、そのつながりを生かして、無駄になるものをなくしていけるようなものづくりを進めていけたらと思っています。

例えば、うちだったら、エプロンや割烹着しか縫えないかもしれないけど、別の工場であれば、帽子やバッグ、手袋が縫えるかもしれません。上勝町に来て、町のゼロ・ウェイストの取り組みや色々な人たちの活動を見ている内に、僕も自分にできることやっていきたいと思うようになりました。これからは、単に捨てられる予定のものを使ったものづくりだけではなく、そのものが最終的にどのように処分されていくのかという使い終わった後のことまで考えたものづくりをしていく必要があると考えています。依頼を受ける立場としても、単に機能や条件だけを聞いて言われたものをつくるのではなくて、これはもっとこうした方が捨てる時に便利だとか、リサイクルしやすいといった提案をしていけるといいなと。

私たちの親の世代はつくったスーツをそのままサイズを直して子どもに引き渡すという文化がありましたが、今は、服って旬が過ぎたら捨てられてしまうものというイメージがあります。

そんな、服との付き合い方なども少しずつ変えていけたら面白いなと思っています。

JOCKRIC RECLAIM 上勝

④ いろどり農家/Tea Mate 百野 大地さん

 

-上勝町との出会いについて教えてください。

百野:僕は大阪出身で、上勝町に来たのは8年くらい前になります。実は僕自身は元々農業にまったく興味はなかったのですが、ある時、僕の母親が葉っぱビジネスで注目を集めていた「いろどり」の活動に興味を持って上勝町に移住することになりました。それまでずっと専業主婦だった母親が、一体どんな所でどんなことをやるんだろうと思って、いろいろ調べているうちに「いろどり」のインターンシップを見つけて、ひとまず参加してみることにしました。

現地では、メディアで報道されていたように、地元のおじいさん、おばあさんたちが元気で楽しそうに仕事をしていたのですが、ふと、この人たちがいなくなったら、「いろどり」の活動は誰がやっていくのだろうと思いました。インターンシップの期間が終わって大阪に戻ってからも、そのモヤモヤはずっと残っていました。それから2年くらいが経った時、「いろどり」から「新規就農者育成事業をやるので参加しないか?」という声かけがありました。県外在住の農業未経験者を一から育成しようという取り組みで、要件にぴったりあてはまるということもあって、移住することにしました。

-上勝町での取り組みについて教えてください。

百野:僕は、はじめは上勝町の新規就農者育成事業というかたちでひっぱってもらったのですが、事業がなくなってしまって、半年後には、地域おこし協力隊の話をもらって晩茶のPRの仕事をしていました。仕事をしていく中で、そもそも上勝町に来たきっかけだった新規就農者の育成をやってみたいと思うようになりました。一から農業をスタートして自立して食べていけるようになるまでのモデルプランを自分自身を実験台にしてみようと思い、農業に取り組むことにしました。主には「いろどり農家」として、葉っぱを穫るための木を育てています。紅葉とか桜とか。

そんな中、新たに「いろどり農家」を始めようと考えている人が、安定した生計を立てるためにはどうすれば注文に対してより効率的に葉っぱを出荷することができるかを試行錯誤したり、

栽培の技術を向上できるかを考えたりしています。

僕が上勝町に来た8年前は「いろどり」の生産者は200人くらいいましたが、今では、半数の100人くらいに減ってしまいました。このままでは町の人口も、生産者さんもどんどん減っていってしまうという現状の中で、そういった課題を解決するためにも、大手を振って「上勝町に来て、いろどりやったら?」と言えるような環境にしていきたいです。

また、「いろどり」の取り組みとは別にTea Mateという事業をやっています。これは、町内でお茶をつくっている農家から、買い取りをして販売をする、いわゆる卸売業です。上勝町は、晩茶が有名なのですが、実はお茶の専業農家はいなくて、自家用につくられている生産者も多いです。そうした方々は自分たちでつくったお茶を自分たちで飲んで、後は親戚や友人にあげて余ったものは、捨てていると聞きました。それってもったいないなと思ったのです。一歩県外に出るとまだまだ手つかずの市場がたくさんあるので、そうして余った晩茶を買い取ってECサイトで販売する事業を始めました。

晩茶の生産者もご年配の方が多くて、仕事はたいへんな上、お金にならないから辞めようと思っているという声をよく聞くのですが、晩茶を知って手に取ってもらう機会を広げることで、晩茶を生産するという文化を残していけたらと思っています。いろどりだけや晩茶だけでは、食べていくことは難しくてもいくつか組み合わせることで新規の就農者でも自立できるモデルがつくれるのではないかと考えています。

- 今後の取り組みについて教えてください。

百野:僕は、上勝町に来てから、特別にゼロ・ウェイストを意識して行動が変わったということはないのですが、生活をしていく中で、ゴミをなくすことや、ゴミを減らすことを自然と考えるようになっていたかもしれません。世の中のトレンドや商品の選び手もサスティナビリティに向いているので、生産者としても必然的にそこに向き合っていく必要があると思っています。今はまだ小さな子どもを育てているのですが、自分の子どもが大きくなった時に、将来上勝町で就職できるような環境をつくれるように頑張りたいと思います。

Text&Photo:
Yuki Kanaitsuka
Edit:
Takahiro Sumita
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