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【クラフトマンインタビュー】木村氏に聞く、シルバーアクセサリー「SIEN」のモノづくりにかける想いとは。のサムネイル

【クラフトマンインタビュー】木村氏に聞く、シルバーアクセサリー「SIEN」のモノづくりにかける想いとは。

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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
【クラフトマンインタビュー】木村氏に聞く、シルバーアクセサリー「SIEN」のモノづくりにかける想いとは。のサムネイル

2021年にローンチされたシルバーアクセサリーブランド「SIEN(シエン)」。”シルバー958”というシルバーの純度の高い素材を使用し、独自の造形美を表現しています。

今回は、デザイナー兼クラフトマンの木村さんにブランドのことや木村さん自身のことも根掘り葉掘り聞いてみました。

CBS:
こんにちは!今回はよろしくお願いします。

木村さんはSIEN、そしてROOCH(ル―チ)というアクセサリーブランドを展開されていますよね。このような素敵なアクセサリーを作り始めた、きっかけについてお伺いさせてください。

木村さん:
こちらこそよろしくお願いします!

小さい頃からモノづくりが好きだったんですが、金属に触れ合うようになったのは16歳、高校生の時ですね。高校に伝統工芸を習うクラスがあったんです。

高校では漆芸や木工、鉄なども扱っていましたが、私のクラスははじめから金属で伝統工芸品(鍛金、彫金、鋳金といった技法を使って)を製作していました。2年からは選択制となり、その中で「鍛金」という技法を選択し、銅板を叩いて曲げてコップや壺などを作っていました。

曲げる、切る、溶かす、くっつけるというように、金属はほとんどの加工ができるんです。ここに造形の可能性を感じて、金属に惹かれていきました。

高校の授業とは別で個人的に作っていたこともありますが、高校卒業後にアクセサリーを加工する会社で働き出したのが、本格的に作り始めたターニングポイントです。

先日開催したPOPUPストアではその場でサイズ調整もしていただきました。

CBS:
おお!高校生というかなり早い段階でモノづくりを始められたんですね。そして満を持して、シルバーアクセサリーのブランドを立ち上げられたと。SIENの特徴について教えてください。

木村さん:
SIENの立ち上げの際に考えていたのは、シンプルで使いやすいデザイン。そしてシルバー958という素材に特化したもの。この2点をブランドのベースとしています。

また、素材の良さを表現する中でデザインが見えてくるものこともあります。あまり複雑なデザインを作ってしまうと素材の特徴が消えてしまうんですよね。

CBS:
なるほど。この造形美は素材の良さを活かしたデザインなんですね!木村さんが手掛けられているもう一つのブランド「ROOCH」との違いはどんなところにあるのでしょうか。

木村さん:
SIENではシンプルにシルバーの良さを引き出すデザインを作っています。

一方 ROOCHは、シルバーに対して燻し加工をしています。燻す事で表面が黒くなるのですが、経年変化によって燻しが取れてシルバーが少しずつ出てくるんです。

シンプルにシルバーの良さを活かすSIENのデザインと、黒が変化してシルバーが出てくるROOCHのデザインでは、表現の仕方が全く変わってくると思っています。なのでブランドの看板を分けたんですよね。

CBS:
SIENの特徴でもあるシルバー958の魅力について教えてください。

木村さん:
一般的なシルバーアクセサリーの素材で有名なのは925だと思います。925は加工のしやすさがポイントでよく使われていますよね。

SIENが使う958は銅の割合が減って、シルバーの純度が高まるんですね。それがなにを意味するかというと、ひとつは素材が柔らかくなるという事です。傷が入りやすいということにもつながります。長年使っていただくと日々入る小傷によって、アクセサリー全体がマットな表情になるんです。こんな感じでマットになっていくんですよね。

手前が木村さん着用私物、奥が同型新品の商品。細かい傷によってマットな表情に。

はじめはシルバーがギラっとしてるので、男性は使いにくいと思われることもあるかもしれませんが、このくらいマットになると使いやすくなると思います。

もう一つは、経年変化による変色が起きにくいので、シルバーを維持しやすくなるという特徴もあります。

CBS:
かなり表情に変化が出ますね!!素敵な経年変化です。つけた時の肌触りがとても良いのも、素材の特徴ですか?

木村さん:
肌触りに関しては素材というより仕上げ、磨きの影響ですね。「毎日つけたくなる」ような感覚を大事にしていて、週末の特別な時だけつける、ではなくずっとつけていたいという風に思ってもらいたいですね。なので肌触りに関わる、仕上げの磨きはかなり意識しています。

肌に触れる部分の角を落とすことでつけた時の肌触りが格段に良くなるんです。アクセサリーの表面もデザインが崩れない程度に角を落としています。手間はかなりかかりますが、日常的に使う際にひっかかりや違和感が生まれないようにそのような加工を心がけています。 

CBS:
着けた時の滑らかさは磨きによるものなんですね。トップが大きいリングでもとても着けやすかったです。

木村さん:
あとはデザインの影響もありますね。SIENのリングはサイズ調整するためのスリットが入っているのですが、この部分は肌へ触れないんですね。トップが大きいデザインであっても、このスリットがつけやすさに繋がっていたりするんです。

CBS:
デザインについてもう少しお伺いさせてください。どのようにデザインを考えられているのでしょうか。

木村さん:
それぞれのアクセサリーのデザインの元になるのは、ぼくの頭の中の妄想ですね。出掛けている時に出会う素敵な造形を目にした時「自分だったらこのニュアンスを、アクセサリーにどう落とし込むか」と、ガーっと妄想してその場でフリーズします(笑)。 

それをどう解釈して、デザインにして、形にしていくかを少しずつまとめていきます。なのでブランドとしてデザインのコンセプトを明確に作ってはいないですね。

あとは実際に素材を削り出しながら、頭の中での妄想を形にして整えていくような感覚です。彫刻と同じイメージでしょうか。削っていきながら距離感やサイズを見て作っています。

重ねづけも人気との事。おすすめの組み合わせを選んでもらいました!

CBS:
話を聞いていると、製作がとても楽しそうに感じます。とはいえ、大変なところもありますよね?

木村さん:
仕上げのときに、高速回転してる布にアクセサリーを当てて磨くのですが、摩擦熱で猛烈に熱くなるんですね。そのまま磨いていくと、身に付けている手袋ごしでも伝わる熱で指の先に爪サイズのタコができるんです。時間をかけながらゆっくり作業すればいいのですが、夢中で一気に仕上げちゃうので、ここは我慢です。記事にすると地味なエピソードになりそうですね(笑)。

あと、最近気が付いたのですが、磨きの時は小さなアクセサリーを指先だけで固定するので、ここの筋肉がかなり発達してます(笑)。

写真だとわかりにくいですが、親指付け根の筋肉がかなり盛り上がっていました(笑)

CBS:
すごい!職人さんならではの勲章ですね!

木村さん:
やっぱりこだわっている磨きの工程には時間をかけますね。

CBS:
アクセサリーをつける習慣が無かったり、選び方に悩んだりしている人にむけて、アドバイスありますか?

木村さん:
まずは使うことがアクセサリーを綺麗に維持できることもあるので、デザインや指なじみの観点で使いやすいものを選ぶのが大事かと思いますね。

使いやすい=シンプルなデザインになるので日々のコーディネートにも落とし込みやすいかと。SIENのアクセサリーは素材の特徴を出すためにデザインされています。

表面が複雑すぎることなく、つるっとしていたりぽってりしていたりことで素材がより広い面で見えてきますよね。そうすることで経年変化も見えやすくなっています。

CBS:
メンテナンスの点でシルバー958ならではの注意点はありますか?

木村さん:
925など他のシルバー製品と同じメンテナンスで問題ありません。使った後に油分を拭きとり、ジップロックなど袋に入れることで空気に触れず、変色を防いでくれます。

ただやっぱりおすすめなのは日々身につける事ですね。動いたときに洋服や肌に擦れることが自然な磨きとなり、綺麗な状態を保つ秘訣になるんです。

実は歯磨き粉と歯ブラシもメンテナンスには役立ちます。歯磨き粉には研磨剤が含まれているので、細かい部分まで綺麗にできるんですよね。

貴金属磨きは簡単に手に入り、取り入れやすいメンテナンス手法。

CBS:
なるほど!シルバーは日常で使いやすい素材なんですね。

木村さん:
そうですね。本来金属は強いものなので、正直頻繁にメンテナンスしなくても問題ないと思います。

仮に数年間使わず放っておいたとしても、メンテナンスによって新品同様に戻ると思いますね。その強さが金属の魅力でもあります。なのでジュエリーって代々受け継がれたりするんですよね。

CBS:
長く使っていく楽しみがありますね!

木村さん:
僕は、アクセサリーを購入した時点ではそれはただの”工業製品”っていう見方をしています。それを使う中でその人の思い出が刻まれていくことで、それがはじめて”モノ”として成り立つのかなと思っています。

CBS:
素敵です!新しいアクセサリーを選ぶ時、今後このアクセサリーとどんな思い出を作っていこうか、と考えてしまいますね。では最後に、木村さんが今後チャレンジしていきたいことはありますか?

木村さん:
ROOCH、SIENはアクセサリーに特化したブランドですが、モノづくり全般が好きなので違うカテゴリーのもの、木や革など貴金属ではない素材を使ってモノづくりをしていきたいと思っています。

プライベートではテーブルとか棚とかなんでも作っています(笑)。※POPUPストアで使用した商品展示台も木村さんが作られたものでした。

夢は”家を作ること”。今はアクセサリーを作っていますが、この先はもっと幅広くモノづくりに取り組んでいきたいと思っています。

POPUPストアでは、シンプルで使い勝手の良いデザインが人気でした。

<今回ご紹介した「SIEN」の商品一覧はこちら>

インタビュー後記

今回はSIENというブランドや素材であるシルバー958のこと、メンテナンスについてもお話をお伺いさせていただきました。

デザインから製作までご自身で行われる木村さんがどのような思想でアクセサリーを作られているのか、モノづくりのこだわりを深く知ることができたのはもちろん、木村さん自身の魅力にも触れることができました。

皆さんにもSIENのアクセサリーを店頭やオンラインストアにてご覧いただき、モノづくりのこだわりに触れてもらえると嬉しいです。実際に試していただくと、その魅力が存分に伝わってくるはずです。

チューズベースでは今後もブランドやそのモノづくりを行う方へのインタビューを実施していきます。ぜひご覧くださいませ!

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