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対話が少なくなった時代に「日常を祝福する」ギフトの素晴らしさ / me and you 竹中万季&野村由芽のサムネイル

対話が少なくなった時代に「日常を祝福する」ギフトの素晴らしさ / me and you 竹中万季&野村由芽

対話の可能性を考えるme and youの竹中万季さんと野村由芽さんに聞く、とっておきのギフト体験。

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CHOOSEBASE編集部
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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
対話が少なくなった時代に「日常を祝福する」ギフトの素晴らしさ / me and you 竹中万季&野村由芽のサムネイル

「CHOOSEBASE SHIBUYA」の新たな編集テーマは「gift your color / 何色にしよう」。「色」をキーワードにした新しいギフトの選び方、あなただけの「色」を誰かに伝えるギフトの贈り方をご提案しています。そして、この「連載 gift your color」では、さまざまな人のギフトにまつわるストーリーをお聞きし、ギフトの魅力について深掘りをしていきたいと思います。

今回ご登場いただくのは、自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ「She is」を経て、2021年に独立をしたme and youの竹中万季さんと野村由芽さん。メディアやコミュニティを通じて“対話”の可能性を探るお二人に、とっておきのギフトについて伺います。

ーお二人が「She is」の活動を始めたきっかけを教えてください。

竹中:もともとCINRAという会社に2人とも所属していて、そこで2017年に「She is」を立ち上げました。自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティというコンセプトです。

野村:当時は、月に1回か2カ月に1回くらいのペースで特集を組んでいました。「She is」はウェブメディアを軸に運営していたのですが、流れの速いウェブメディアの中でも、自分の人生の中でちょっと立ち止まって考えたいこと、本当にやりたいことと向き合う時間を作りたいなと思うようになったんです。

竹中:一番最初は、私たち2人の会話の中で生まれたモヤモヤや違和感に対して、なんでこういうことについてもっと話せないんだろう、個人的な考えを口に出せるところがあったらいいなって思って作った場所でした。

 

野村由芽

編集者/文章を書く。2017年にCINRAで「She is」を竹中万季と立ち上げ、編集長を務める。2021年4月から竹中万季と株式会社ミーアンドユー(me and you, inc.)を立ち上げる。小さな違和感も幸福もなかったことにせず、個人的な想いや感情を尊重し、社会の構造まで考えていくコミュニティメディア「me and you little magazine&club」を運営。性にまつわることを自分の温度で話しはじめてみる音声番組「わたしたちのスリープオーバー」をSPINEARおよびJ-WAVEで毎週金曜日に配信中。

ー「She is」はギフトとも縁のあるライフ&カルチャーコミュニティだったと思います。

野村:「She is」にはギフトのコーナーがあって、お申し込みいただいた方々に月に一度ギフトを贈っていました。メディアの構想初期からギフトの取り組みをしようと決めていたわけではないのですが、モノがあることによって表現できたり、触れることができたり、より多面的なコミュニケーションを行えるのではないかと思って始めました。ギフトって祝福感のあるものだなと思っていて、月に1回祝福してくれたり自分の生活を後押ししてくれるようなものが届いたらいいんじゃないかという考えもありました。誕生日や記念日じゃなくても「ただそこにいることが素晴らしい」という、日常を祝福するような気持ちでギフトを捉えています。

竹中:「She is」でギフトの取り組みをしていたとき、自分のために贈りものをするということについて改めて考える機会になって。ギフトってモノそのものだけじゃなくて、相手に何を贈ろうかを考えるところから、相手がそれを受け取って開ける、一連の流れのことだと思うんですよね。そんな中で、自分に何を贈ってあげようかなと考える時間はすごく尊いなと感じるようになりました。


ー2021年にはme and youを立ち上げられましたが、現在の活動について教えてください。

野村:me and youは「個人と個人の対話を出発点に遠くの誰かまで想像や語りを広げる」ことをテーマに掲げています。「She is」は単数形で、個人の声を取り上げたり、個人の存在を大事にしていました。一方でme and youは個人を大事にしながらも、個人同士がどうやって向き合っていけば良いのか、個人と社会について考えていくことを出発点にしています。

竹中:具体的には2022年の2月に「me and you little magazine」というウェブマガジンを立ち上げました。そこでも個人と社会を行き来しながら、社会構造について考えたり、個人の思いや考えを大切にした日記やインタビューなどのコンテンツを作っています。ほかにも「me and you club」というコミュニティを運営していて、思いを共にする人たちで集って、社会問題や本、音楽やファッションなどについて語り、新しい出会いが生まれる場所を作っています。

 

竹中万季

編集者/プロデューサー。2017年にCINRAで「She is」を野村由芽と立ち上げ、ブランドリーダーを務める。2021年4月から野村由芽と株式会社ミーアンドユー(me and you, inc.)を立ち上げ、代表取締役に就任。

野村:自分のことを大事にしようと思えば思うほど、個人の努力だけでは限界があると感じるようになりました。もちろん自分で自分の気持ちを整えることも大事だけれども、社会や政治の状況が変わらないと、個人の生活も難しくなっていく。だから、力は小さいかもしれないけれど、社会の一員として社会に働きかけていくことも必要だと思い始めました。

竹中:私たちは個人であることと同時に、誰かと関わり合いながら生きているということを忘れずに、その難しさと面白さについて考える機会を増やしていきたいなと思っています。

ーお二人にとって思い出に残っているギフトのエピソードがあれば教えてください。

竹中:中高生の時に、プレイリストを作って、それをCDに焼いて友達にあげていたのを思い出しました。コラージュで表紙を作って、その裏面に手紙を書いてケースに入れて友達に渡してたんです。お店で何かを探すのももちろん好きですが、自分で作ったものを人にあげるのも楽しいですよね。最近でもSpotifyでプレイリストを作ってだれかに贈ったりしています。

野村:すごくいいギフトだね。私は近所に好きな定食屋さんがあるのですが、そこのおばちゃんから最近、嬉しいギフトをいただきました。私は洋服が好きなのですが、コロナ禍でなかなか外出できなくて服を買っても着ていく場所がなくて。新しい服を着ていくと毎回おばちゃんがすごく褒めてくれるのが嬉しくて、この定食屋さんが1番のお披露目の場になっていたんです。そんな定食屋さんに、今年はじめて行った日に、おばちゃんと娘さんがいきなり花束をくれたんです。定食屋さんが仕入れしている八百屋さんが育てたお花みたいで、おばちゃんと娘さんが自分でラッピングまでしてくれて。こんなことあるんだってすごく嬉しくなりました。よく通っていて、会話して、お互いに大事に思っていることはなんとなくわかっているけれど、その想いがいざ花束という形になった時にびっくりしました。

竹中:その八百屋さんも素敵だね。いつも送っている野菜と一緒に花を添えて贈ってくれる。そういう気遣いができる人になりたいですね。

 

ー最後に、さまざまなギフトをキュレーションされてきたお二人のおすすめのギフト選びのポイントがあれば教えてください。

野村:モノ自体の良し悪しも大事かもしれないですが、やっぱり自分が1番嬉しいのは「これを見てあなたのことが想い浮かんだ」とか「あなたに似合うと思った」とか、そういう気持ちだと思います。例えば「旅先であなたが想い浮かんだからこれを贈ります」なんて手紙とともに贈りものをもらったら嬉しいですよね。あと、個人的にはもっとギフトを贈る機会が増えたら良いなって思っています。コロナ禍で人の温度を感じたり、直接会って「大丈夫?」って声をかけるような助け合いの機会が減っていると感じます。なので、人とのつながりの形のひとつとして、ギフトを贈ってみるのも良いと思います。

竹中:私も意見が重なりますが、この人に何かを贈りたいと思う気持ち自体がギフトなんだと思います。なので、形や値段にそこまでこだわる必要はないんじゃないかな。記念日だから贈らなきゃいけないなどと気にする必要もなくて、喜んでほしいから突然贈りものを贈るような気持ちでいたら、ギフトをより楽しめるのではないでしょうか。

Text:
Natsu Shirotori
Photo:
Eichi Tano
Edit:
Takahiro Sumita
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