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イノベーターのためのレザーブランド「objcts.io」と市川渚が話す、大切なものを長く使うためにできることのサムネイル

イノベーターのためのレザーブランド「objcts.io」と市川渚が話す、大切なものを長く使うためにできること

イノベーターのためのレザーブランド「objcts.io(オブジェクツアイオー)」と商品開発などにも関わってきたクリエーティブ・コンサルタントの市川渚さん。両者の視点から見る「ブランドの魅力」と「TIMELIMIT」に向けてできること。

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CHOOSEBASE編集部
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CHOOSEBASEに関わる、ヒト・モノ・コトをクリエーターの皆さんといっしょにお送りするオリジナルコンテンツです。 写真、インタビュー、コラム、エッセイ、小説など、多彩な記事で、皆さんの日常の選択を豊かにできたらと思っています。
イノベーターのためのレザーブランド「objcts.io」と市川渚が話す、大切なものを長く使うためにできることのサムネイル

イノベーターのためのレザーブランド「objcts.io(オブジェクツアイオー)」。イノベーターの日常を支えるさまざまなガジェットをサポートするための本質的かつ機能的な“オブジェクト”を開発し続けているブランドです。


そんなブランドのファンであるとともに実験的なプロダクト制作にも一部関わってきた、ファッションとデジタルテクノロジー分野で活躍するクリエーティブ・コンサルタントの市川渚さん。今回の記事では、「objcts.io」創業メンバーの角森智至さん、山中学さんとともに「ブランドの魅力」について、また売場のテーマでもある「TIMELIMIT」について、両者の視点からブランドや消費者としてどのような思いを感じているのか、お話を伺いました。

 

「objcts.io」創業メンバーの角森智至さん(左)、山中学さん(右)

 

ーーはじめに「objcts.io」というブランドの特徴を教えてください。

角森:「objcts.io」は、私と代表の沼田が「土屋鞄製造所」にいたときに「自分たちが欲しいものをつくってみたい」と考えたことから2016年に始まりました。そこから準備を経て2018年に本格ローンチしたので、今年で4年目ですね。製品としては革製品をつくっています。デザイン性に配慮しながら機能性も両立したものづくりを目指しています。

ーー「objcts.io」といえば、商品のカテゴリがほかにはないイメージがあります。 

角森:最初のバックパックを製作するきっかけが「自分たちの欲しいPCバッグがない」というものだったんです。私も沼田もデバイスやテック系のアイテムが好きだったので、それらに関連する製品をつくろうと思いました。それが現在の製品ラインアップにも表れています。 

市川:私もはじめにお会いしたときは「ニッチなことをやろうとしているなあ」と思いました(笑)。考えればたしかに思いつくけど、それを具現化しているのがすごいですよね。

 

ーーテスト版をつくっては試して改善していくプロトタイピングが「objcts.io」のものづくりの特徴と聞きます。

角森:はじめのバックパックは、販売に至るまでにサンプルを15個製作しました。多くのサンプルをつくること自体が素晴らしいわけではないのですが、プロトタイピングを重ねる中で見えてきた課題に一つひとつ向き合い、改善を行った結果そうなってしまったんです。最初の2年間で自分たちの製品開発のスタイルを確立して、現在はその当時と比較すると短い期間で商品を打ち出せるようになりました。

市川:私が「objcts.io」を好きなのは、企画ありきでものづくりをするブランドではないところです。トレンドや売れるものをつくろうとするようなブランドの成り立ちではなく、彼らはただ純粋に、ものをつくるのが好きな人たちなんですよ。時間をかけて、夢中になってものづくりをしている部分に一番魅了されました。

角森:ひとりに寄り添い、その人の声を聴きながらものづくりをすることが重要だと考えています。利用者として実在する方をイメージして開発したアイテムも多く、その場合は本人から直接フィードバックをいただいています。具体的なひとりをイメージして製品開発を行うと、ニッチなものになるけれど、その人を深く感動させる製品になるんです。たとえば昨年、妻のためにウォレットバッグという製品をつくりました。コロナ禍での在宅ワークがつらくて、近所のお店で食事をするときくらい身も心も軽やかにお出かけできるとその時間がもっと豊かになると思い、スマートフォンポーチと財布が一体化した製品をつくりました。その際にも試作を重ねて、実際に妻からフィードバックをもらいました。このスタイルは、これからも続けていきたい「objcts.io」のものづくりの特徴です。

クリエーティブ・コンサルタントの市川渚さん

 

ーー市川さんとは共同で商品開発をされたこともあるとか。 

角森:渚さんがオフィスへ遊びに来たときに、「渚さんの生活や仕事で使っているものにフォーカスして何かつくれたらおもしろいですよね」という話をしたことがきっかけでした。

市川:最初はカメラや機材のバッグをつくろうかと考えていました。私はものを買うときにすごくこだわるタイプなんですけど、実用性に特化したものが多いカメラバッグのなかで、純粋に欲しいと思えるデザインに出会えなかったんです。結果的にはそのころドローンをよく使っていたので、ドローンを収納できるバッグをつくることになりました。移動のときにも邪魔にならず、使うときにはさっと取り出せて、身に着けたまますぐにドローンを飛ばせるようなものだといいなと、かなり細かく希望を伝えました(笑)。

角森:渚さんにお会いしたときに全身でドローンを使うシーンを表現してくださったりして(笑)、いただいた要望はすごくわかりやすかったです。

市川:欲しい要素を全部理解していただいて、最初の試作ができたときには「なるほど〜」と思いました。自分では思い浮かばない形状だったんです。撮影機材を入れるバッグは、どうしても“エルゴノミック”(人間工学的な形)になりがちなのですが、そうではなく、正方形のバッグが仕上がってきて。実際にドローン撮影に使うものを一式入れてみたところ、求めていた要素を完璧にカバーしていた上に、バックパックをつくってきたブランドさんとしてのアイデンティティもちゃんと反映されていてすごいなあと思いました。

角森:バックパックの構造を採用している部分もありますが、これに関しては渚さんと一緒だからこそ生まれたものだと思います。初期のプロトタイプを製作するゼロの段階から渚さんに入っていただいた結果、私たちにはない渚さんの知見や感性が企画段階から混ざって、完成品に反映されたように感じます。ドローン用のバッグというニッチな製品でしたが、渚さんからカメラを収納して持ち歩くのも良いと感想をいただいたことで、より一般的なカメラバッグの製作にもつながりました。

ーー今回「CHOOSEBASE SHIBUYA」に出店していただいた理由は?

山中:白金にしか店舗がない上に、コロナの影響で完全予約制になってしまって。もっと生活に近い場所で製品を見てもらいたいという気持ちがありました。「CHOOSEBASE SHIBUYA」のような、コンセプトに合わせてブランドを集めた売場は新しいし、タイミング的にも女性のお客さまが増えてきたので、これまでとは違うコミュニケーションの場所として最適だと思ったんです。

ーー今回は「TIMELIMIT」というテーマでブランドをキュレーションをしているのですが、ブランドをやっていてサステナビリティについて意識することはありますか。

山中:サステナブル素材のプロダクトについてや、レザーの調達経路など、お客さまからお問い合わせをいただくことは増えています。製品について言えば、我々のレザー製品は長く使う前提でつくられているので、全パーツ交換できるようになっています。一つのものを長く使えるようにというのは、我々の特徴でもありますね。

角森:特殊な構造ではないのですが、それぞれのパーツを単体で取り出すことができたり、修理がしやすい構造でつくっています。実際にお客さまの声を聞いて、長く使えるものが求められていることは実感しています。

ーー市川さんは、「TIMELIMIT」という言葉を聞いてどんなことを考えますか?

市川:私は本当に気に入ったものでないと絶対に買わないので、長く使えるかどうかはすごく大事にしているポイントです。気に入って買ったものがすぐダメになったり、壊れたあとに「パーツがないからお直しできない」と言われてしまうと悲しいですよね。最近友人からお直しについての相談を受けることが増えてきたのですが、長く使えるようにケアして使えることや、そもそもケアできる素材であることは、これからもっと重要視されていくと思います。それはサステナブルかどうかというより、もっとシンプル。自分が気に入って買ったものだから、長く使い続けたいと考えるのは自然なことですよね。ひとつのものを長く愛すことは、余計な買い物やゴミを出さないことにもなるので、結果的に良い形でサステナビリティにつながっていく部分もあるのかなと。お直しについて、お店への問い合わせを躊躇してしまうことがあると思いますが、気になることはなんでも聞いてみるべきだと思いますね。

ーーお直しをしようと思ったら意外と高くて躊躇してしまうこともあると思います。

角森:修理は、製品を丁寧に解体してから綺麗に組み立て直すことになるので、内容によっては多くの時間と技術を要します。あるとき、お客さまの修理費用が購入金額と同じくらいになってしまったことがありました。それをお伝えしたところ「問題ないので全部修理してほしい」と仰っていただいて。レザーは経年変化を楽しめるので、できる限り使い続けたいというお声をいただいて、あらためて革製品の魅力に気がつきました。

市川:自分で使い続けてエイジングした革の感じって、再現不可能なんですよね。その人にとってはお金じゃ買えない価値になると思うんです。新品に買い替えるのとはまた違いますよね。

ーーでは、最後に、今後市川さんと再びものづくりをやるとすればどんなものをつくりたいですか?

市川:実は新しい企画も、ちょっと水面下で動いていたり(笑)。

角森:そうなんです。小物やiPhone周りでつくれたらいいかもという話をしています。乞うご期待です。

「objcts.io」の商品はこちらから。

guest:
Nagisa Ichikawa
Text:
Maho Kamagami
photo:
Eichi Tano
edit:
Takahiro Sumita

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