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捨てられていくものに注目した二つのブランドが「循環」によって生み出す新しい価値 ファーメンステーション × レルムナチュレジャパンのサムネイル

捨てられていくものに注目した二つのブランドが「循環」によって生み出す新しい価値 ファーメンステーション × レルムナチュレジャパン

食材廃棄などが大きな課題となっている飲食・食材カテゴリーでこれまでにない新たな価値を生み出す二つのブランドが「循環」をテーマに対談を実施。

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捨てられていくものに注目した二つのブランドが「循環」によって生み出す新しい価値 ファーメンステーション × レルムナチュレジャパンのサムネイル

捨てられるホタテの貝殻をアップサイクルしたマルチパウダー「618 scallop powder」を生み出したレルムナチュレジャパンと「Fermenting a Renewable Society」をパーパスに未利用資源を再生・循環させる製品開発を続けるファーメンステーション。食材廃棄などが大きな課題となっている飲食・食材カテゴリーでこれまでにない新たな価値を生み出す二つのブランドから、「循環」をテーマに話を伺います。

レルムナチュレジャパン・鈴木典子さん(左)とファーメンステーション・酒井里奈さん

ー まずはじめに両ブランドの紹介をお願いします。

酒井:ファーメンステーションは、「Fermenting a Renewable Society」をパーパスに、発酵を通して未利用資源の価値を上げていく事業を行っています。使われていない田んぼが多くて悩んでいる岩手県の農家と市役所の方から声をかけていただいたのがきっかけでした。現在は主にオーガニック認証のお米を栽培し、それを発酵することでできるエタノールや発酵エキスを使用したスキンケア商品やウエットティッシュ、アロマスプレーなどを販売しています。

鈴木:レルムナチュレジャパンは、産業廃棄物であるホタテの貝殻をアップサイクルしたマルチパウダー「618 scallop powder」を企画販売しています。水に溶かすとアルカリ性が高まり、さまざまな洗剤の代わりとして使うことができます。洗剤は私たちの生活になくてはならないものですが、市場に出ている洗剤の中には、汚れは落とすことはできても、排水に流れていくことで地球環境や生態系に負担をかけてしまうものもあります。なぜ洗剤ではなくこのパウダーを使うのか、ということを知っていただくところから、あらゆる生命の源である水の循環を考えるきっかけにしてほしいという思いがあります。

ー それぞれの製品は、どのような課題を解決しているのでしょうか?

ファーメンステーション

酒井:ファーメンステーションはいろいろな課題にチャレンジしながら事業性と社会性の両立が可能であると証明していく存在でありたいと思っています。たとえば、お米を使用した製品を作っている理由は、使われなくなった田んぼを再生していくためです。田んぼは通常、地域のダム機能を担っていたり、生物の生息地としても重要な役割を果たします。さらに事業規模を拡大できれば、農家さんの収益向上も目指すことができます。ほかの製品も、使用している資源によってそれぞれ解決したい課題が違っていて、異なる思いが詰まっています。

 「618 scallop powder」

鈴木:私たちの製品はホタテの貝殻を使用して作られていますが、ホタテ貝のほとんどは、身だけをとって出荷し、残った貝殻は食べられないウロなどが付いたまま廃棄します。これにより害虫や害鳥が発生したり、海の汚染や生態系にも影響を与えたり、貝殻をそのまま放置することで起きる土壌汚染の問題も深刻でした。「618 scallop powder」を使用することで、間接的にこれらの問題解決にもつながります。また、私たちは「美しく洗おう」というコンセプトを掲げ、製品だけでなく、水や生態系への負担をかけない洗い方も伝えています。たとえば、油やソースがべっとりと付いたお皿をそのまま洗剤で洗ってしまうと、排水溝の詰まりの原因にもなる上に、環境負荷も相当なものになります。古紙や古布で汚れを拭き取ってから洗うことで、環境負荷も減りますし、洗剤もほとんど必要ありません。

ー お二人がブランドを運営していくなかで、大切にしているポリシーはありますか?

酒井:未利用資源を活用し、使い切る、そして資源の価値を上げることをポリシーとしています。発酵って面白くて、一つの資源をさまざまなものに変換することができるんです。食べてしまえばそこで終わってしまうお米も、発酵することによってエタノールを作ることができ、また発酵粕はにわとりの餌になります。そこからとれた鶏糞は田んぼや畑の肥料になるので、さらに良質なお米や野菜を栽培することができるんです。発酵し地域のなかで循環させていくことによって、より良い価値を生み出していくことができます。

鈴木:素晴らしいですね。岩手で事業をされている理由がわかるような気がします。資源が豊かな場所だからこそ、できることですよね。

酒井:そうなんです。むしろ、岩手じゃないとできないと思いますね。農作物も豊富ですし、なにより協力してくださる農家さんがたくさんいるんです。

鈴木:レルムナチュレのポリシーはシンプルです。動植物を殺さないこと、人間の健康を守ること、地球環境を汚さないことの3つです。「618 scallop powder」は製造過程においても電力や水などの環境資源を最小限に抑えています。手作業の工程が多いため、大量生産はできませんが、製造工程において地球環境への負荷が大きければその製品を使う意味がないと考えます。SDGsの項目にある「つくる責任 つかう責任」に関するマインドチェンジを、体現したいと思っています。

 

ー 環境や社会問題に関して、世の中の認識もどんどん変わってきていますが、お二人はどのように感じていますか?

酒井:10年前に比べると、かなりポジティブな反応をいただくようになりました。以前は製品の機能について聞かれることがほとんどでしたが、最近は生産背景も合わせて聞かれることが多くなりました。どうして、どうやって作られたかに関心を持って商品を買う方が増えているんですよね。加えて、デジタルの力が大きくなり伝える手段が増えたことも、良い変化の要因だと感じています。

鈴木:もともと私たちの製品に興味を持ってくださる方は主婦の方が多かったのですが、最近は20代後半くらいの若い方からも関心をいただいています。酒井さんのおっしゃるとおり、機能だけではなく背景に興味を持ってくださる方が増えたことも同時に感じています。私たちは、あえて紙のくわしい説明書はご用意していないのですが、これは「618 scallop powder」の使い方から始まり、なぜ洗剤ではなくホタテなのか、という環境問題を友達や家族で話すキッカケにつながってほしいという思いがあるからです。「ホタテで洗えるって知ってる?こうやって使うんだよ!」などと会話のきっかけになってくれたらとても嬉しいんです。メーカーからの一方的な発信ではなく、みんなで伝えていくことで問題を自然と自分ゴトとして捉えることができると思っています。

酒井:特にコロナ禍で、コミュニケーションが減っているこの時代にぴったりですね。説明書を付けないのは、思い切りのいる決断だと思います。

鈴木:「これはホタテの貝殻からできていて、産業廃棄物で......」って説明しても、聞いている方はお腹いっぱいになっちゃうんですよね。でも、実際に使ってみて綺麗に汚れが落ちたら、自然と誰かに伝えたくなるじゃないですか。ファーメンステーションさんの製品もそうですよね。良い香りとか、心地良いとか、便利であるって、鍵みたいなものだと思っています。その鍵で開いた扉の先で、生産背景に興味を持っていただけるといいですよね。

ー 最後に、これからブランドを続けていく上でどのようなことに取り組んでいきたいかをお伺いしたいです。

酒井:扱う資源の量と種類を増やしていきたいです。傷んだバナナといった果物やコーヒー粕など、さまざまな未利用資源の価値を、わたしたちの発酵技術を活かして上げていきたいですね。
ブランドのことを応援してくださる方のためにも、製品を通じ、生活のなかで環境のことを一緒に考えたり、お役に立てるような存在でありたいと思います。ちょっとずつ進化していきたいですね。

鈴木:使い切れないほど、ものが溢れているこの世界で、私たちは新たに「もの」を作ることは考えていません。「618 scallop powder」を通じて「地球での新しい暮らし方・生き方を考えるきっかけ」をつくっていきたいと思っています。

Text:
Maho Kamagami
Edit:
Takahiro Sumita
Photo:
Eichi Tano
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