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日本工房探訪 vol.2 岡山県・デニムアパレルと泊まれるデニム屋「ITONAMI」 愛着の高い状態をデニムで作るのサムネイル

日本工房探訪 vol.2 岡山県・デニムアパレルと泊まれるデニム屋「ITONAMI」 愛着の高い状態をデニムで作る

それぞれの街におけるサステナブルなモノづくりの様子を写真家・もろんのんさんが写真と文章でお届け。第2回は岡山県にあるデニムブランド「ITONAMI」をご紹介いたします。

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もろんのん/フォトグラファー
もろんのん/フォトグラファー
日本工房探訪 vol.2 岡山県・デニムアパレルと泊まれるデニム屋「ITONAMI」 愛着の高い状態をデニムで作るのサムネイル

「CHOOSEBASE SHIBUYA」に出店いただいているブランドの魅力を現地からお届けする連載企画「日本工房探訪」。それぞれの街におけるサステナブルなモノづくりの様子を写真家・もろんのんさんが写真と文章でお届けします。第二回は岡山県にあるデニムブランド「ITONAMI」から。

「ITONAMI」とは

児島から見える瀬戸大橋

晴れの国・岡山の児島にやってきました。児島はどんな場所か知っていますか?穏やかな瀬戸内海に面した児島という土地は元は名の通り島だったのですが、江戸時代に埋め立てられました。この土地は塩分が多い土壌で、米があまり育たなかったそうです。しかし、育つ過程で塩分を吸ってくれる綿の栽培に活路を見出した結果、繊維産業が盛んになりました。

今回私が取材にお邪魔させていただいたのは、デニムのアパレルブランドや宿泊施設を運営する「ITONAMI」。兄弟で共同代表をされているのですが、弟の島田さんにご案内をいただき、「ITONAMI」のものづくりの想いや、ものづくりの裏側を紐解いてゆきます。

「ITONAMI」はさまざまなプロジェクトを手がけ、クラウドファンディングなどでも話題のため数年前から存じ上げていたので、すごく楽しみにしていました。

繊維産業に携わっていく「ITONAMI」の意志

ITONAMI 代表取締役 島田舜介さん

島田さんが岡山の大学へ進学した際に、デニム職人と出会ったのがきっかけで大学生のころの2015年に「EVERY DENIM」という名前で“消費されないデニムを届ける”という理念のもと、メディア的な役割から一緒にものを作る活動を開始。全国にデニムを届ける47都道府県旅を終えた後に、2019年からデニムを届ける拠点としてここ児島に「DENIM HOSTEL float」を開業し、翌年2020年の10月にはブランド名を「ITONAMI」にリニューアルしました。

その名には、繊維産業(糸:ITO)に携わっていくという想いと、土地としての瀬戸内海(波:NAMI)。そして、自分の意志(I)を(TO)波(NAMI)のように伝えていくという想いが込められているそうです。

「長く使ってもらう」よりも「愛着の高い状態を作る」

テンセルデニムワンピース − Minamo

大学時代から今に至るまで全国を巡ったり、さまざまなプロジェクトを手がけるデニム兄弟。一人ひとりが物を大切にしたいとか、気に入っているという気持ちを持っているということが生活を豊かにしていると考えています。

長く使ってもらうことよりも、使っていてダメになってもリペアして愛着の高い状態を作っていくことが消費者にとって一番大切だと考えています。その一つの活動として「fukuen」プロジェクトがあります。これは長年使ってきたデニム商品をもう一度インディゴ染料で染め直すことで、愛着の高い状態にしてくれるものです。

私はデニムは色落ちを楽しんでいくものだと思い込んでいたので、デニムを染め直すことができるということに感服しました。

fukuenプロジェクトで染め直されるデニム

2019年にオープン、泊まれるデニム屋「DENIM HOSTEL float」

瀬戸内海国立公園の中にあり自然豊かなDENIM HOSTEL float

「DENIM HOSTEL float」にはリモートワークの長期滞在をされている社会人や、クリエイターの若い方がいらっしゃるのが印象的で、アットホームな宿でした。リピートされるお客さまや、当初の予定よりも滞在を延長される方も多いんだとか。

客室からは瀬戸内海が一望できます

部屋の細部で見つけられるデニム生地と備前焼のマグ

かくいう私もまるで家族のようだけど適度な距離感の居心地の良さに、一泊では物足りずもっと瀬戸内海を眺めながら仕事をしたいと後ろ髪を引かれる思いでした。3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の時にまたぜひ宿泊させていただきたいです。

「ITONAMI」のデニム生地ができるまで

篠原テキスタイル株式会社 新規事業部長・篠原由起さん(右)

「ITONAMI」の織布工場はふたつあるのですが、そのうちの一つの広島県福山市にある篠原テキスタイル株式会社へ参りました。篠原テキスタイルは110年以上も続く老舗の工場で、現社長が篠原由起さんのお父様で4代目だそうです。

みなさんはデニムの製造工程をご存知ですか?デニム製造は分業で、ここ篠原テキスタイルでは糸から生地を織っています。

インディゴ染料を使って蒼く染められたデニムのたて糸

織り機によってたて糸とよこ糸が織られていく様子

たて糸とよこ糸をガシャガシャと賑やかに、目にも止まらぬ速さで織っていきます。織られた生地は一巻き一巻き職人の手によって、織り込む時に入ってしまった、糸くずなどがないかを確認。傷がないか、規格が合っているかの確認をされ、その後別の工場で裁断して縫製し、洗って完成です。

「ITONAMI」のデニム製品たち

 

「ITONAMI」のこれから


デニム商品を売るだけでなく、泊まれるデニム屋やさまざまな活動をしている「ITONAMI」。その原動力が「愛着を高い状態にする」ことだということと、ものづくりにまつわる方に対する尊敬の念を感じて「ITONAMI」さんの商品や活動に対してより一層愛着を持つことができました。

今やっていることだけでなく今後とも何か今あることに対して投げかけをやっていきたいと思っているそうで、「ITONAMI」がこれからどんなプロジェクトをやっていくかその活動が楽しみです。


CHOOSEBASE SHIBUYAに並ぶ「ITONAMI」の商品たち

商品の詳しい情報はこちら

Text&Photo:
もろんのん
Edit:
Takahiro Sumita
Design:
Ayane Sakamoto
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もろんのん/フォトグラファー
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